大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

広島高等裁判所松江支部 昭和26年(う)314号 判決 1952年9月01日

被告人 杉原ツモ

弁護人の被告人に児童福祉法第六〇条第三項にいわゆる過失がないとの主張について

凡そ婦女を特殊飮食店に接客婦として雇入れ使用せんとする場合には、その店主はその婦女が満十八才に達したかどうか細心周到の調査を遂げ、その年齢を確認すべき注意義務がありこれを怠るときは、児童福祉法第六〇条第三項本文の適用を免れ得ないものと解するを相当とする。これを本件についてみるに○原○ゲ○を住みこませるについて被告人は、単に同女の年齢を聞きその体格等を見ただけでたやすく同女を二十才以上と軽信し、事前に更に進んで転出証明書を取りよせるとか戸籍謄本を取りよせ、これに基き人違いか否かを尋ねるとか、その他何等かの適切な方法を取らなかつたのは、この点において被告人に過失ありと言うに妨げない。他の業者が如何なる方法を取つておるかは全然別個の問題であつて何等本件事案における被告人の過失の有無を左右するものではない。されば原審が被告人に対し児童福祉法第六〇条第三項本文を適用して処断したのは、正当で何等法令の適用に誤りはないものといわねばならぬ。

別紙

原審判決

本籍 簸川郡長浜村大字荒茅四四八番地

住居 簸川郡大社町大字杵築南八〇七番地

特殊飮食店営業 杉原ツモ

明治二十二年十一月二十九日生

右の者に対する児童福祉法違反並びに昭和二十二年勅令第九号違反被告事件について、当裁判所は次の通り判決する。

検察官検事 中野国幸出席

主文

被告人を罰金三千円に処する。

右罰金を納めることができないときは金百円について一日の割合で被告人を労役場に留置する。

訴訟費用は全部被告人の負担とする。

一、事実

被告人は肩書住居において、特殊飮食店を営んでいる者であるが接客婦を雇入れるには婦女の年齢を調査し、之を確認した後に為すべき注意義務があるにも拘らず、右注意義務を怠り、昭和二十六年三月末頃被告人方において○原○ゲ○(昭和九年四月三十日生)が年齢を満十八歳以上である旨申出たのを漫然信用し年齢の調査をしないで、同女を接客婦として雇入れ、同女との間に、同女が被告人方に住み込んで売淫を為し、之によつて得た収入金の約五割を収受することを契約し、同年四月一日頃から同月末日頃までの間被告人方において同女に売淫をさせたものである。

一、証拠

証人○原○ゲ○の証言

西須佐村役場作成の○原○ゲ○の身上調査書

司法警察員作成の曽田伝太郎の供述調書

検察官作成の被告人の第一回及び第二回供述調書

検察事務官作成の被告人の第三回供述調書

司法警察員作成の被告人の第一回供述調書

以上の証拠により犯罪事実を認める。

一、法令の適用

被告人の所為は、一面において児童に淫行をさせた行為として児童福祉法第三十四条第一項第六号、第六十条第一項及び第三項本文に、他面において婦女に売淫させることを内容とする契約をした行為として、昭和二十二年勅令第九号第二条罰金等臨時措置法第二条第一項に該当するから、刑法第五十四条第一項前段第十条により重い前者の罪の刑に従い、所定刑中罰金刑を選択し、その刑額範囲内において主文の刑を量定し、右罰金を納めることができないときは、刑法第十八条により金百円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとする。

よつて、主文のように判決する。

昭和二十六年十一月二十七日

松江家庭裁判所

(裁判官 山崎林)

理由

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例